ピンク色に髪の毛を染め、2000年代の女性シンガーの最前線を走り続けるP!NK。本作は全米6位/全英2位まで上昇し、全世界で1,500万枚を超えるヒットになった初期の傑作。 (C)RS
ポップス業界には恩を仇(あだ)で返すなという法則がある。どういう意味かって? MTVの人気番組「TRL」に出演できてうれしいのなら、金を稼がせてくれたサウンドはあまりいじらずにそのままにしておくのが一番だということだ。そんな業界だからこそ、リスナーはピンクをおおいに信頼しなければならない。フィラデルフィア育ちのこの歌姫は、粗削りだが口ずさみやすいポップR&Bのヒット曲「There You Go」や優れたリメイク「Lady Marmalade」で名を挙げたかもしれない。だが、本作では彼女がまとっていた赤紫のフードと同じく、あのサウンドは姿を消している。それに取って代わっているのが、真夜中のブルースと心のこもった歌詞を織りまぜた、さらに強烈なオルタネイティヴ・ロックだ。そのうえ、ときには日記の見出しのように、借り物の言葉ではなくて自分の言葉で思いをぶつけている(「Family Portrait」には「つらそうなママを見るのがつらい」というシンプルな名文句がある)。そして、ピンクの内にあるアラニス的な面を表に出すのを手助けしているのは、激しいロックナンバー「18 Wheeler」をプロデュースしたダラス・オースティンと、ピンクによって一発屋の地位から復活した元フォー・ノン・ブロンドのリンダ・ペリーである。叩きつけるビート(「Get the Party Started」)に素直な告白をとり混ぜ、ピンクの力強いボーカルと誠実な決意によってスリリングになった本作は、聴いておいて損はない。(Amy Linden, From Amazon.com)